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井澤卓 井澤卓
井澤卓

【飲食店レポート】メルボルンのリスニングバー:Waxflower

Taku Izawa

【飲食店レポート】メルボルンのリスニングバー:Waxflower

Taku Izawa

毎月恒例の飲食店レポート。
今回は、7月に訪れたオーストラリア、メルボルンからリスニングバーを取り上げる。

最近、各国のリスニングバーを訪問している。
きっかけは、ParisでワインバーのBambinoを訪れてから。レコードで流す音楽が主体のお店かと思いきや、料理も本格的で、ワインやカクテルも豊富で美味しい。

音楽を聞くために訪れるも良し、ディナー目的で訪れるも良しという間口の広さが新しく感じて興味を持つと、世界中に同じ様な業態のお店が増えている事に気づき、各国で回って勉強している。

今回訪れたWaxflowerも、日本にはなかなか無い業態で、魅力に詰まったお店だったのでぜひ紹介したい。

店内の構造はリールにまとめているのでこちらをぜひ御覧ください。

Waxflower

Waxflower (@waxflowerbar) • Instagram photos and videos
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Waxflowerは、ブランズウィックという、メルボルンのシティから少し離れたエリアにあるお店。自分達ではワインバーと銘打っている。
ワインバーとは言え、しっかりとした食事ができ、クラフトビールタップも充実。カクテルメニューも10種類あったりと、使い勝手は幅広い。

東京のジャズ喫茶やロンドンのリスニングバーから大いに影響を受けてこのスタイルで営業を始めたそう。

食事やワイン、気持ちの良い音楽はもちろん、内装が抜群に良く、スタッフもカジュアル&フレンドリー。とにかく気持ちが良くて、「ずっとここにいたい」と思わせてくれるお店で影響を受けた。

スタッフのスタイリングは完全に私服で、みんなおしゃれ。このお店のスタイルだからこそ、スタッフがかっこいいことは必要不可欠。自分たちもやはり手を抜けないなと再認識。


■店内の構造

  • 水曜日の18時半に予約をして来店。住宅街にあるお店で、平日にも関わらず屋外席まで超満席。カウンターの端、DJブースを正面に、空間全体が見渡せる一番良い席に案内される。外にもテーブル席があり、全体の客席数は40程は有りそう。
  • 空間の広さは客席エリアで60平米程度。カウンター席が8席ほどあり、その他ボックス席が充実。6名ほどのグループでも楽しめる構造。
  • カウンターはU字型、松屋カウンターの変形版で、DJブースはカウンターの外側に置かれている。非常に上手い、脱帽なゾーニング。DJはフロアを見渡しながらプレイできる。

  • キッチンは奥に隠れており、全く視認ができない。せっかくのリスニングバーなのに、同じグルーヴで働けないのは少しかわいそう。
  • 内装は個人的にかなり好きなテイスト。東京だとFuglenの代々木公園のお店に似た感じ。全体的にベージュ×ブラウン×ブラックの温かみのある組み合わせ。日本ではこういった北欧モダンな内装でのワインバー、ましてレコードリスニングバーは存在しないので、あれば絶対に流行ると確信。


音楽

  • 当日は18時半〜21時頃まで滞在。DJは40代と見られる男性が2名。時たま彼らの友人らしき人がDJブースにきて談笑しながらゆったりとプレイする。選曲はロイ・エアーズのアップテンポな曲等オールドスクールなダンスミュージックが中心だが、たまにアンビエントも。少し体を揺らしたいくらいの丁度いい選曲が食事中に心地よい。
  • 店内はあくまで食事を楽しむことが優先になっており、踊る感じではない。地元の来店客はグループが多く、欧米人らしく会話に盛り上がって音楽はあまり聴いてなさそう。笑 DJ陣もしょっちゅういなくなってしまったりとゆるい感じ。それがまた良い。
  • ロータリーミキサーはロンドンのIsonoe社のもの。オーディオマニア向けの機材がしっかり入っており、DJ陣もテンションが上がる環境に。

カクテル

  • カクテルメニューは10種。日本からインスピレーションを得ているとのことで、日本の食材がズラリ。ただやはり欧米スタイルに近く、ショートカクテルが中心。今回は、First Impressionsというロングカクテルをオーダーした。味はまあ美味しい、という感じ。氷は製氷機なのでやはりすぐに水っぽくなる。欧米では氷に拘る店は数少ないため、それができればさらに差別化できそう。

料理

  • つまみからしっかりディナーまで食べられるレストランとしてのラインナップ。
  • 金額は物価もあるがやや高めで、8,000円から10,000円の客単価。飲食物のクオリティにおいては日本のレストランバーの方が高い。

■カラマリとスイートポテト
スイートチリのクリームソースのような感じ。一番美味しかった。

■ナスのアジアンソース
甘めのソースで味は濃いめ。お酒が進む一品。欧米人が好きそうな味。

■アヒルライス
かなりボリューミー。お肉はくさみがあり、個人的にあまり得意ではなく、残してしまった。下の米はリゾットのような感じ。

■感想

  • 最近気になっているリスニングバー業態。このお店もしかりだが、国外の多くのリスニングバーは日本のレコードバーの影響を受けているとのこと。もう少し国内の往年のジャズバーなどを巡って見る必要があると感じた。
  • Waxflowerのように、ちゃんとシェフがいてディナーもしっかり食べられるリスニングバーは東京でも中々イメージがなく、個人的には新しいと感じる。東京に同じプレイヤーが参入したら人気になるのでは。
  • この業態は、リスニングバーと銘打つに足るオーディオシステムはもちろん、数千枚のレコードを揃える投資が必要。「レコードで聞く音楽が圧倒的に好き」か、「圧倒的に資本がある」プレイヤーしか出来ないためハードルが高い。レコードはコアなファンやマニアが幅を利かせるカテゴリのため、単純な資本力で始めても後ろ指を指されて終了、となるとやはり参入障壁が大きい業態なのだろう。
  • ただ、音楽が空間の1要素としてしっかり認識されるレストラン業態というのは興味深く、今後更に増えていくのでは。日本のレコードバーは、クラシックバー同様少し入店障壁が高いお店が多いと感じるので、それをカジュアルダウンしつつ、食事もカクテルもしっかり美味しいお店を作れば間口が広がる。
  • マニアックなカテゴリをカジュアルダウンし、他の価値と組み合わせて新しく再構築する取り組みは一定のニーズがあるので、今後日本国内でも注視していきたい。
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