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井澤卓 井澤卓
井澤卓

「売れるデザイナーには売れる理由がある」ことを再認識した話。

Taku Izawa

「売れるデザイナーには売れる理由がある」ことを再認識した話。

Taku Izawa

先日、僕達が運営するホームグッズブランド、MYTONEの新たな戦略商品を企画するにあたり、ある売れっ子のグラフィックデザイナーの方へデザインの相談をした。

彼の活躍は多方面で目にしており、グラフィックデザインに携わる者ならみんな知っている。僕自身、彼が生み出すデザインが本当に好きで、もし彼が手掛けるインテリアプロダクトがあれば絶対に欲しいと思っていた。

今回、大きな投資を伴う戦略商品の開発というまたとないタイミングだった
たこともあり、思い切って相談してみることに。

多忙であることは間違いないので、「うちの仕事なんて受けてくれるのかなぁ」なんて話しつつ、聞いて断られたら仕方ないとメールを送った。

するとすぐに返信が来て、「直接話をした上で引き受けられるか判断したい」ということだったので、昨日オンラインで打ち合わせをした。

打ち合わせが始まると、開口一番、「色々調べてみて、藤井さん(MYTONEのメンバー)のnoteも読みました」と。事前にブランドのことや、僕達の会社のことを調べてくれていた。

プロジェクトの概要をお話した後は、彼から鋭い質問がいくつも飛んできた。

予定する生産数は何枚か、販売金額はいくらか。その販売金額は高いのか、安いのか。
(おそらく気になるであろう、原価に関してはこちらから開示して情報はなるべく渡すようにした。)
加えてMYTONEは何年のブランドで、どんな背景でスタートしたのか、など。

質問が表層的では無く具体的。
その内容から、まずブランドの成り立ちに興味を持っていることが伝わってきた。(気を良くした僕は、どんどん聞かれてもない内情を話してしまった。笑)

かつ、プロフェッショナルとして、「自らのデザインがブランドの繁栄、つまり利益という結果をどのくらい残すことができるのか」を考えている印象を受けた。

過去にたくさんの社外パートナーと仕事をしてきたが、「相手に興味を持ち、事前に調べ、的確な質問をする」ことは当たり前なこととされつつ、意外とできていない人が多い。

僕も会社員で営業をしていた時代に口酸っぱく言われていたので、打ち合わせ前に必ずリサーチと課題の仮説構築まで準備するようにしている。
ただ、最近それをちょっとサボっていたことに気付かされた。

今回、仕事を依頼する立場から体験して、この姿勢がいかに重要なことかを再認識した。

余談だが、僕達の会社では、自社事業に注力すると比例してデザインの受託が減ってきている。それも全て、この事前の準備や、相手のビジネスへ対するコミットの強さが減ってしまっていることが原因なのかもしれない。反省だ。

彼の場合は、金銭的な懐事情まで把握しようとしてくれていて、「自分がやる仕事のその先」、つまり、「自分のデザインでそのビジネスを後押しできるのかどうか」を考えているところがとても印象的だった。

デザイナーはアーティストでは無い。
自分が作りたいものを作れば良いというわけではなく、その依頼主のビジネスを包括的に捉えて、自分のフィルターを通して今この瞬間に世に出すべきものを生み出すプロフェッショナルな仕事だ。

だから、凄いデザイナーは、ビジネスそのものへの理解度はもちろん、今の世の中の動向やこれから起こりうる変化、人々のインサイトへの感度がとても高い。

今回はこの事実を改めて実感した。
たった30分の会話で、「この人に任せたら絶対に良い物を作ってくれる」と心を掴まれた。
やはり、評価を得ている人は、仕事への姿勢、人間力からして違う。

・相手に興味を持ち、事前にリサーチして準備する
・プロフェッショナルとして価値を提供する以上、その先でクライアントのビジネスの成長を描けるかどうかを真剣に考える

この2点は忘れず、チーム全員で大切にしていきたいなと思う。

ちなみに、そのデザイナーの方のプロダクトの発表は来年以降になる。リリースするのが今から楽しみだ。

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